不動産の相続登記(名義変更)が必要な理由
相続登記とは、相続財産である土地や建物など不動産の名義を変更する手続きです。
この手続きをしないとと、相続人が複数いる場合はその不動産は相続人の共有となります。遺産分割協議をして相続する人に所有権移転の登記をすることで相続人が所有者となります。
しかし、この登記手続きには義務がなく、明確な期限が定まっていないために、または下記のような誤解によって放置をしてしまう方もいらっしゃいます。
それでは、相続登記をせず、そのまま放置をしても問題はないのでしょうか?
登記をしないデメリット
(1)その相続財産(不動産)に関する自分の権利を主張することができません。たとえご自分がその不動産を相続したとする遺産分割協議が終了していても、その相続登記がされていなければ、他の相続人が自分の持分を勝手に売却してその登記をしてしまうと、買主に対して「自分の不動産だ!」と言えないのです。
(2)時が経つとともに、関係の希薄な相続人がどんどん増え、いざ遺産分割協議をしようとしてもまとまる話もまとまらなくなる可能性が高くなります。
(3)相続をした不動産を売却したり、その不動産を担保に融資を受けることもできません。
(4)相続財産の相続登記(遺産分割)を終えてない場合は、共有財産となるので、共有者全員でしなければその不動産の売却もできません。
(5)相続人の誰かに借金、税金の滞納がある場合、その相続人の持分が差し押さえられてしまうかもしれません。
登記をしない理由
死亡した方が遠隔地に土地を保有していた場合に、遺族の方(相続人)が知らずに、相続登記ができなかったケース
このまま放置しておくと、相続する権利を保有する相続人が年月ともにどんどん増えていき、遺産分割に異を唱えたり協力してくれない相続人が出てくることが考えられます。
また、分割方法で合意していたものの、その後に新しい相続人が増えて相続分を主張してきたりして、一向に遺産分割が進まないことになってしまいます。
相続人が(借金などを理由に)行方不明になってしまい、その相続人が不在のため、手続きができないと思い込み相続登記をしなかったケース
相続人がなんらかの理由で行方不明になってしまうこともあります。しかし、その相続人が不在ではもちろん遺産分割協議は成立しません。
このような場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人選任の申立て」を行い、行方不明になってしまった相続人の代わりに、法律の専門家などが不在者財産管理人として、話し合いに参加して遺産を分割することができます。
登記済証(権利証)を紛失したため、登記ができないと思い込んでいるケース
不動産を所有している方は、権利証(不動産登記法改正により権利証が発行されていない場合は、登記識別情報)を原則もっておられますが、紛失していたとしても、相続登記に権利証は必要ありません。
相続登記をすると、“莫大な”相続税が発生すると思い込んでいるケース
相続に関する手続きをした時に、必ず相続税が発生すると思っておられる方が非常に多いのですが、相続税が発生する相続案件は全体の6%程度といわれています。
相続税には基礎控除があり、相続財産の価額3000万円に相続人一人につき600万円の基礎控除があり、基礎控除以下であれば相続税はかからず申告も必要ありません。相続財産が基礎控除額以下の場合は安心して相続不動産の相続登記をお済ませ下さい。
なんらかの理由で登記をせずに長期間経過してしまったことで、なにかの罰則があると恐れて、名義変更をしなかったケース
相続登記をしなかったからといって、罰則などが適用されることはありません。ですから、すぐに相続登記手続きをすることをお勧めいたします。
ご自分の権利を守るためにも、相続登記は絶対にしておくべきです。